冬彼の場合:一日目

今日の冬彼:【戦闘】

エレベーターが開くと、中にはぎっしりゾンビが詰まっていた!

戦うしかない! 11のダメージ! 

フォロワーの助けを得られるなら8のダメージ。

食糧:-2

HP:100→89

食料:100→98

持ち物:なし

状態:なし

クリアフラグ:なし 


 

  世界はどうやら大変なことになっているらしい。

 ニュースで流れているような難しいことは分からないけど、惨状は大体理解出来た。歩く死体だなんて、物語の中だけだと思っていたのに。

 人の生だってある意味では物語ですよ、と頭の中で声がした。

 でも俺たちはフィクションじゃねぇやい、と別の声が反論する。

 中で喧嘩するのは止めてね、なんて僕は心の内で苦笑しながら目の前にあるエレベーターのボタンを押した。

 今いるのはデパートの九階。保存の効く食料を頂戴し、ポケットに詰めてきたところだ。

 ボタンが淡く光り、稼動音が響く。

 階段で降りた方がいいんじゃねぇか、という声がした。

 もしかしたら生存者がいるかもよ。そう答える。

 でも電気もったいないですね、だなんて呑気な声に僕ともう一人も思わず笑ってしまった。

 と、エレベーターがこの階に来たようだ。チン、と軽い音が鳴って、扉が開く。

「うっわ……」

 その隙間から幾つもの手が飛び出してきた。さすがに扉から離れた。僕の中にいる二人も焦っているのが分かる。

 乗っていたのは生存者ではなくゾンビだった。例の、歩く死体である。

「ざっと二十以上……なら」

 軸にするための左足に力を込める。キュッと左足の爪先を鳴らすと同時に床を蹴り上げた右足を薙ぐよう振るう。

「シッ――!」

 噛み締めた歯の隙間から息を吐く。そして右足が勢い良くゾンビ共の頭を数個刎ねていった。柔い果実を潰したような感触と水音。ああ、気持ち悪い。

 噛まれないように気をつけてください、という注意をされる。

 いくら薬物毒物が効かない体とはいえ、この新種のウイルスも無効化されるとは限らない。リスクは減らす、もしくは失くした方がいい。

「でもせっかく来たんだし、エレベーター乗りたいなあ」

 じゃあ俺に殺らせろよ、と好戦的な声が響いた。ジリジリとした焼けつくような興奮がこちらにまで伝わってくる。

 一度ゾンビから距離を取り、肺の空気を全て吐き出す。そうして目を閉じ、体を明け渡した。

 

 

 ――僕が自分の体に戻ってきた頃には全てが終わっていた。体に痛みはない。無傷で勝てたようで安堵する。

 ごめん汚した、なんて言う声が聞こえて下を見やると、僕の靴やズボンはゾンビの体液でドロドロに汚れてしまっていた。

 これは替えが必要ですねぇ、と呆れたように別の声。

 確か三階に紳士服のコーナーがあったはずだから、そこに行くよ。僕は溜息を吐いて答える。

 戦闘の間律儀に僕を待っていたエレベーターに乗り込み、三階のボタンを押す。そして最後に閉じるボタンを押してその階を去った。