夕の場合:三日目【アクシデント】

今日の夕:【アクシデント】

窓際に追い詰められた! 隣の建物に飛び移るしかない! 

今が22時~10時ならダメージなし。

それ以外なら9のダメージ! 

いずれにせよ食糧:-3

(2014/01/23 16:00)

 

HP:92

食料:98→95

持ち物:お守り(時刻で効果が変わる【アクシデント】で

       好きな効果を選べる。使い捨て)←Lost

状態:なし

 クリアフラグ:なし


 

 どうも、破一夕です。万事屋『O.K!』の所長ですが未だ事務所に辿り着けません。それどころか現在、ふらりと立ち寄ったビルでゾンビ共に追い詰められてしまいました。

 

「もう駄目かも……」

 さすがの俺も今回ばかりは本気で弱ってしまっている。

 食料や着替えを求めて入ったビルで、まさかこんな目に遭うとは思わなかった。まあ大きなビルだったし死体も転がっていたから警戒していたのが、俺としたことが追いかけられて焦ってしまい、上へ上へと逃げてしまったのだ。

 

 今俺は、どこかの荷物室に立て籠もっている。放置してあった荷物で入り口のドアを塞いでいるが、大量のゾンビがそこに体当たりする音が聞こえる。いつ突破されるか分からない。

 その前に俺は決断しなければならなかった。

 一番楽なのはここで諦めて自殺してしまうことだ。幸い拳銃の弾は余っている。銃口を口に突っ込み引き金を引けば、銃弾が俺の頭を貫いて全てを終わらせてくれるだろう。脳が機能しなければゾンビ化することはないので生き残った人間に迷惑をかけることもない。

 次の選択肢はこの部屋を飛び出してゾンビの群れと戦うことだ。弾に限りがあるから全ての敵を倒すことは出来ないものの、銃でだってゾンビは殴れる。要は捕まらなければいいのだ。そうやって凌いで、下に降りてビルから脱出。これは機敏さと勇気が試されるミッションになるだろう。

 そして最後は隣のビルへ飛び移るという選択肢。今いる部屋の窓を開ければ、三メートルほど先にある建物の窓が見える。幸いにもその窓にはガラスがないので上手く行けば飛んで入れそうだ。窓と窓の位置は大体同じくらいだろうか。

 しかし俺は、何を隠そう高所恐怖症なのである。窓を開けて一瞬だけ下を見下ろした瞬間に足が震えて動けなくなってしまったのだ。なにせ俺がいるのはビルの十階。失敗した場合、運が良ければ転落死、悪ければ行動不能になってゾンビに食われるのを待つしかない。ただじゃ済まないのだ。だが成功すればゾンビと戦うことなく生き延びられる。

「どうする、どうする!?」

 ふと先日神社で拾ったお守りの存在を思い出した。ポケットの上からその存在を確認する。

「どうしてこんな時にお守りなんか……」

 これが、俺を助けてくれるのだろうか。この窮地から救ってくれるのか?

 もう決めなければいけない。前方には窓、背後はゾンビ、諦めるなら自殺、落ちれば死か地獄。

 そして、選んだ。

「俺に、勇気を……!」

 構えていた銃を仕舞い、お守りを取り出す。体中に汗が流れる。怖い。でも死ぬのは嫌だ。なら、やるしかない。

 バリケードが崩れ、開かれたドアから大量のゾンビが入り込んだ。その瞬間、俺は窓に足をかけ、

「ああああああああああああああ!!!!!!!」

 跳んだ。飛んだ。窓枠を蹴り出し、寸でのところで掴みかかる腐敗した手の群れから逃れる。

 勢い良く飛び出した体はギリギリ、ビルに届くかどうかくらいだった。必死に手を伸ばし向かいのビルの窓枠を掴む。その際に握り締めていたお守りが手から抜け落ちてしまった。

「……っ!」

 落下していくお守りを目で追おうとして、止める。今下を向いてしまったらまた恐怖で動けなくなってしまうから。俺はどうにか体を持ち上げビルの中へと転がりこんだ。

 この窓に嵌っていたであろう窓ガラスは床で砕け散っていた。皮膚を切らないように体を落ち着け、息を吐く。

「はぁ~――」

  そろそろと窓の向こうを覗き見ると、獲物を失った亡者たちが手を伸ばし、何匹かが押し出されて転落していくところだった。

「本当に、運がいいな俺は」

 この状況でよく生き延びられたものだ。しかも奇跡的に怪我一つしていない。

 あのお守りのお陰か、もしかしたら神様っているのかも、なんて都合の良いことを考えてしまう。

「……さぁ、行くか」

 いつまでも休もうとする体に鞭打って立ち上がる。ここもいつゾンビが攻めてくるか分かったものではないのだ。

 ぐずぐずするな、とにかく動け。生きて帰らなければならないのだから。

 活を入れると、俺は部屋を出るためにドアを開けたのだった。